ウツ気分がアイデンティティの不安定さに由来するものであることがもし見えてくるようなことがあれば、ウツモードからの脱出はそう遠くないと考えていいのです。アイデンティティと言うと、何となく中高生のころにできるものだというイメージがあります。実際、この概念を提唱したE・H・エリクソンも、青年期に形成されるとしています。
しかし最近の若者は、この時期に受験勉強ばかりの生活を送っていたり、親への反抗期も経験しないことが多く、そのため、アイデンティティが形成されるのが20代、30代へとどんどんずれていっています。
人間形成のもっとも大事な時期に、勉強ができたらえらいとか、優秀な学校に入ることがいいことだというふうな、単一的で表層的な価値観ばかりを与えられれば、その人の内面は育ちません。今の学校教育制度はまったくダメなのでしょうし、家庭でもそうしたことをちゃんと教えられる親がひじように少なくなっているのだと思います。
「本当の自分」を血眼になって探そうとすると、余計に迷いは深くなってしまいます。「何となく落ち着くな」とか「違和感がないな」と感じる場所でアイデンティティは自然と根付いていくものなのです。
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